村田真のXMLブログ

日本人で唯一W3CのXMLワーキンググループに参加しXMLの標準化プロセスに携わったXMLの生みの親、村田真さんのブログです。

HTML5: W3CとWHATWGとIDPF

IDPFのEPUBはHTML5を利用している。HTML5はHTMLの最新仕様で
あり、広く関心を集めている。しかし、HTML5とはどの団体のど
の仕様書によって定められているのだろうか?

おそらく、HTML5といえばW3Cが定めているものと理解されてい
るだろう。しかし、ことはそう簡単ではない。HTML5はWHATWGと
いう団体が定めており、W3Cは単に追認しているだけだとという
見解も存在する。そして、私の見るところでは、どちらが正しいと
も簡単には言えない。

まず、2012年あたりまでの経緯は、以下の記事にある。

「HTML5仕様をめぐるW3CとWHATWGについて、Ian Hickson氏がメーリングリストに書いたこと」

簡単にいうと、W3CとWHATWGは協力しており、WHATWGは最新版を
やるところであって、W3Cが安定版を作るところだという切り分
けである。

W3CのMichael(tm) Smithが書いたAbout the latest WHATWG vs W3C non-news
もこれを裏付けている。

しかし、最新のWHATWGのHTML Living Standardを見ると、W3Cと
WHATWGの関係はそう簡単ではない。イントロにある注をみると、
WHATWGとW3Cはすでに決裂しているとしか私には読めない。この
注の冒頭を訳したものを次に示す。

WHATWGはW3Cに停止を求めてきたが、この仕様の 一部を別のいくつかの文書としてW3Cは出版してい る。本仕様書とW3Cのフォークの間には多くの違いが ある(大きな違いも小さな違いもある)。


ブラウザ開発者は、 WHATWGのLiving Standardしか考慮しない
ので、W3CのHTML5は無視してもよいという意見もみたことがあ
る。しかし、話はそう簡単でもなさそうだ。

まず、Web用のDRMのための仕様であるEME(Encrypted Media
Extensions)は、WHATWGのHTML Living Standardには入っておら
ず、W3Cでしか検討されていない。すでに、多くのブラウザが
EMEを実装しており、最後まで抵抗していたMozillaも実装を開
始している。

このあたりの経緯は、以下の記事に詳しい。

EME・DRMの行方 - HTML5などのWeb技術を中心に揺れるTV業界は、どう変わろうとしているのか?

Mozillaもついに折れる: HTML5のDRMをFirefoxに実装と発表

ほかにも、W3Cで最近検討されているもののリストがある。
これらがWHATWGのLiving Standardにも取り込まれるだろうか?
逆に、WHATWGで開発される新機能はW3CのHTMLにいずれ
取り込まれるだろうか?

最後にEPUBである。EPUBの仕様書は、終始一貫してW3CのHTML5
しか参照していない。WHATWGは、ブラウザ実装にあわせて仕様
を変更し続けていくと明言しているので、EPUB出版物が長期に
わたって有効であることを保証するためには具合が悪い。

EPUBにとってみると、安定していて実装されている仕様がもっ
とも望ましい。その仕様がHTML5の機能のすべてをカバーしてい
なくてとも、大した問題ではない。

EPUBの最新版である3.0.1は、W3CのHTML 5を参照しており、
ISO/IEC JTC1での標準化もそれを踏襲するだろう。WHATWGとの
乖離が致命的なものとならないことを祈るばかりである。

投稿者: 村田 真 日時: 2014.09.01 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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