村田真のXMLブログ

日本人で唯一W3CのXMLワーキンググループに参加しXMLの標準化プロセスに携わったXMLの生みの親、村田真さんのブログです。

2007年09月 アーカイブ

atomの拡張についてのRELAX NGによる検証

Atom(RFC 4287)のスキーマは、スキーマ言語RELAX NGで書かれている。このスキーマは外部名前空間の要素・属性を許すように書かれている。

Atomにはさまざまの拡張がある。たとえば、Atom Threading Extensions(RFC 4685)は、スレッドを表現するために、外部名前空間の要素・属性を追加している。また、この拡張のためのスキーマも定義されている。

ここで問題なのは、RFC 4685のスキーマはAtomフィード全体を検証するのではなく、拡張要素・属性だけしか扱っていないことである。したがって、RFC 4685のスキーマを用いてAtomフィード全体を検証することはできない。いっぽう、RFC 4287のスキーマを使って検証すると、外部名前空間の要素・属性を検査せずに許してしまい、RFC 4685で決めた構文はまったくチェックされない。

先週、筑波大学で行なった集中講義で、Atomのスキーマを書き直し、Atom Threading Extensionについてもチェックするという演習をした。また、Open Searchについても、チェックするようにした。既存のスキーマをそのまま変更するのではなく、カスタマイズ部分は外に切り出している。

そのうち、ちゃんと整理してAtom WGに提出しようと思う。

追記: IETF Atom WGにスキーマを提出した。Atom, thread, history, open search
の四つを扱っている。また、他の拡張を追加することも容易である。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.02 | | コメント (0) | トラックバック (0)

OOXMLの投票結果

賛成17、反対15、棄権9だったという。賛成は(棄権を除いて数えて)2/3必要なので、
このままでは足りない。英文では、CNETの記事Andy Updegroveの記事などがある。

しかし、ballot resolution meetingで、反対から賛成に変えることができる。正確
にいうと、これは条件付反対という投票の場合であり、無条件反対の場合は変え
られない。反対のうち、条件付反対がいくつあり、無条件反対がいくつあるかは
分からない。

5ヶ国が反対から賛成に回れば、OOXMLはISO/IEC規格になることになる。来年
2月にジュネーブで開かれるballot resolution meetingまで、このバトルは終わらない。

追記:
New York Timesの記事、Wall Street Journalの記事などが
出ている。今週中には数え切れないほど増えるだろう。

追記その2: ISOからの正式発表が出ている。

追記: いまごろ書いても仕方がないが、賛成・反対・棄権のどれも自由に変えられるらしい。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.04 | | コメント (0) | トラックバック (1)

SC34の新メンバが与える害

SC34のメンバは急増している。これらの新メンバは、OOXMLとまったく関係のない
投票案件に対して興味をもっていないようだ。

ISO/IEC JTC1の規定では、50%以上の投票率が得られなければ、投票は
失敗するという規定がある。実際に、ある投票が、この50%ルールのために
失敗している。このままだとOOXML以外のSC34の仕事はまったくストップ
してしまうのだ。

追記(2007 10/8): その後も、50%を達成できないことによる投票失敗は
続いている。失敗したのは、RELAX NGとNVDLの正誤表の投票であり、
私としては実害を被っている。SC34及びJTC1として対策をとるべきこと
を強く主張していく。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.10 | | コメント (1) | トラックバック (0)

Japanese vote on OOXML

Japan voted "Conditional disapproval". Japan may change the
vote to yes at the ballot resolution meeting if the Japanese
comments are resolved satisfactorily.

日本は、条件付反対を投じた。日本コメントが満足できる形で
解決されれば、日本はballot resolution meetingにおいて投票を
賛成に変えることがありうる。

Ecma TC45 appears to be considering the Japanese comments carefully.
They e-mailed to the Japanese member body for SC34 and
outlined dispositions of four major comments, which are
most significant. The proposed dispositions look quite reasonable
to me. However, the final dispositions (and the final Japanese vote)
will be made at the BRM next year.

Ecma TC45は、日本コメントを注意深く検討しているらしい。
Ecma TC45は、SC34専門委員会(日本)にメールを送り、四つの
最重要コメントをどう処置するかを大まかに示した。提案された処置は真っ当な
ものだと私は思う。しかし、最終的な処置(および日本の最終投票)は
来年のBRMの席上で決まる。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.11 | | コメント (0) | トラックバック (0)

atomの拡張についてのNVDLによる検証

前回の記事で、Atom及びその拡張のRELAX NGによる検証について論じた。今度は、ほぼ同等のスキーマをNVDLとRELAX NGの組み合わせによって作成した。簡単に言うと、NVDLでAtomフィードを名前空間ごとに分割し、その結果をRELAX NGで検証している。

NVDL + RELAX NGで書いたほうが可読性・拡張性とも優れていると思うが、読者の意見はどうだろう。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.12 | | コメント (1) | トラックバック (0)

OOXMLへの各国のコメント

各国のコメントが公開された。
これを調べれば、どの国が賛成に回る可能性があるか、ある程度の検討はつくだろう。

コメントの数は多いが、複数の国が完全に同じ(単語まですべて同じ)コメントを
出していることがあるので、本当にどこまで多いかはソートしてみないと分からない。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.13 | | コメント (0) | トラックバック (0)

各国のコメントの概要

Rick Jelliffeが、OOXMLについての各国のコメントについてのを述べて
いる。日本はParrot(人から聞いたことをそのままコメントする人)ではなくて
Indie(自分で仕様を読んでコメントする人)だそうな。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.17 | | コメント (0) | トラックバック (0)

Ballot Resolution Meetingまでの日程

OOXMLのballot resolution meetingは、来年2月25日からジュネーブで行なわれる。
1月14日までに、各国のコメントを取り入れて修正したドラフトが、Ecmaによって提出
される。今年12月には京都でEcmaのミーティングが開かれる。

BRMのとき、すべての国は投票を変更できる。つまり、現段階の賛成・反対・棄権という
投票結果はすべて覆すことが可能なのだ。

追記: 12/8からSC34総会が京都であるが、この席上ではOOXMLの審議は公式には
できない。各国が、投票結果を考慮するための期間がとられており、その期間には
公式の審議はできないことになっている(水面下ではもちろんいろいろあるだろう)。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.19 | | コメント (0) | トラックバック (0)

OOXMLへの反対投票が多いからといって駄目とは限らない

OOXMLは、(新参のP-memberによる多くの賛成票にもかかわらず)、判明した
投票結果では充分な賛成を得ていない。

しかし、一般に思われているほど、これはOOXMLにとって悪い状況ではない。
各国は、テクニカルなコメントが一つでもあればいったん反対し、Ballot Resolution
Meetingの審議結果を待って、最終的な投票を決めるというのが当然の手続き
なのである。一般に、真面目に読んでコメントする国は反対票を投じるものだ。
逆に、賛成が圧倒的に多いということは、真面目に読んだ国が少ない(つまり、
その規格案はどうでもいいと考えられている)と、私は受け取る。SC34にも、
そういう投票案件はいくつもある。

では、ODFのとき、なぜ反対票がなかったのか?欠陥のない仕様というわけ
ではまったくないのに?オープンなオフィス文書規格という理念に各国は賛成
したのであって、仕様書の詳細には各国とも目を瞑ったのだと思う。

投稿者: 村田 真 日時: 2007.09.29 | | コメント (1) | トラックバック (0)

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