村田真のXMLブログ

日本人で唯一W3CのXMLワーキンググループに参加しXMLの標準化プロセスに携わったXMLの生みの親、村田真さんのブログです。

2008年03月 アーカイブ

OOXMLのBallot Resolution Meeting速報

いろいろな記事が出るだろうし、ブログにもいっぱい掲載されるだろう。そして、
そのほとんどはどうせ嘘ばかりだ。

今回のBRMは、テキストを改善する場であり、OOXMLを規格化するかどうかを
最終決定する場ではない。どう改善するかだけが今回のBRMの結果である。
この結果をもとに、各国は昨年の投票を変更することができる。どう変更するか
は、まったく各国の判断による。なお、日本コメントはほとんど受け入れられている。

Tim Brayのブログ(これこれ)は、有益である。BRM議長のAlex Brown
現時点で唯一の正確な記事だという。私もそう思う。ただし、What Was Good,
What Was Bad, What’s Next?はTimの意見表明であり、Alexはコメントしていない。

私が言ったことも書いていたので、Timが言ったことも書いていいだろう。彼は、
ODFの仕様書をまったく読んでいないのだそうだ。

追記: Timの記事でThe Resultに書かれていることも彼の意見表明である。私は、
DISから"somewhat better"でしかないという彼の意見に賛成しない。DISより
大幅に改善されたと思う。ただし、充分かという点は議論の
余地がある。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.03 | | コメント (0) | トラックバック (0)

BRMに関する報道の誤り

誤りの多い記事の一例として、 「OOXML Fails to Get Majority Approval at BRM - Updated 3Xs」をあげておく。多くの記事が
これから孫引きしているので、その誤りを引き継いでいる。

"but OOXML still couldn't get a majority of the delegations to back it at the BRM"は
明らかにミスリードを狙っている。BRMでは、OOXMLに対する変更だけが議論され、
OOXMLをISO/IEC規格にするかどうかは議論の対象外である。議論の対象外なのだ
から、賛成多数を得られるわけもない。

"approve all proposed resolutions in a single vote before the end of the BRM"も誤り。
個々のresponseについて、個別に投票が行われている。ただし、各国が1000以上の
responseについて賛否を表明するのは大変なので、各国のデフォルトは何かを指定
することはできる。ある国は、デフォルトを不承認としたが、ほとんどすべてのresponse
について承認・不承認を表明している。

"refuse to vote"(投票を拒否)も誤り。"do not wish to record the vote"(投票を記録
に残したくない)をデフォルトとして選択したというのが正しい。これをデフォルトとして選択
したある国は、個別のコメントに承認・不承認を表明している。

誤りの多い記事など読む必要はない。前の記事で書いた、Tim Brayの
ブログだけ読めばよい。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.04 | | コメント (0) | トラックバック (0)

OOXMLについてのもう一つの記事

Tim Brayの記事のほかにも事実についてほとんど誤りのないものとして、ギリ
シャ代表団の人が書いた記事がある
。私はこの記事のことをTimの新着記事で知っ
た。

Paper ballotの真実については、この記事がいちばん参考になる。ただし、
abstainとdo not wish to record our positionは、ニュアンスが違う
(abstainは消極的反対)という指摘はある。

しかし、この記事で表明されている意見(事実と意見は区別して書かれてい
る!)に私は必ずしも同意しない。たとえば、"My opinion, for example,
and many delegates agree with me, is that the Ecma responses make the
text slightly better, but though slightly better it is still abysmal."
(注: abysmalは酷いという意味)に、私は賛成しない。大幅な改善の例をいくつ
かあげる。1) non-ASCII OPC part名を許せという日本コメントを、Ecmaは完全
に受け入れてOPCを大改定した。2) IETFに通っていなかったURIスキームを落
とす又はIETFに登録せよという日本コメントも、Ecmaは完全に受け入れ、IETFに
登録した。 3) スキーマが、マイクロソフトの検証器でしか動かないという日本
コメントもEcmaは完全に受け入れ、他の検証器で動作するよう修正した。ほか
にも、大きな改善となっているdispositionは日本の分だけでもいくつかある。
もちろん、問題を隠すだけのdispositionもあるし、多少改善したに過ぎない
dispositionもある。

BRMの結果でどこまでOOXMLが改善されたかの正確な評価は、paper ballotで
通ったすべての変更を見ないと分からない。私も、これからすべての変更をもう
一度見てみるつもりである。

なお、この記事は、先に言及した 「OOXML Fails to Get Majority Approval
at BRM - Updated 3Xs」
について、"overinterprets the paper ballot"だと
書いている。実に礼節をわきまえた言い方であると私は思う。

追記: 上に書いた大幅な改善のうち、1)と2)はpaper ballotで承認されている。
ギリシャ代表団は、各国のコメントを精査してはいないそうだから、きっと
気づいていないのだろう。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.06 | | コメント (0) | トラックバック (0)

ODFのproject editorによるOOXMLについての肯定的評価

Patrick Durusauは、SC34/WG3の議長であり、ODFのproject editorの
一人でもある。彼は、ODFのほうがOOXMLより優れていると考えて
いる。

しかし、彼はOOXMLについて肯定的な評価をしている。OOXMLは
オープンな標準化プロセスを経ていると言い、OOXMLとODFの両者が
SC34で発展していくこと
を望み、BRMの結果を聞いてOOXMLの
承認を薦め
ている。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.07 | | コメント (0) | トラックバック (0)

OOXMLへの投票の変更状況

反対から賛成に変更したのは、私の知る限り、現在で六ヶ国である。逆に、賛成
から反対・棄権になった国が二つある。きわめて接戦であり、OOXMLが規格として
成立するかどうかは予断を許さない。結果は月曜には判明する。

訂正: 投票は締め切られた。現在七ヶ国が反対から賛成に変えた。逆に、賛成から
反対・棄権になった国が三つある。依然として、予断を許さない状況である。

訂正: 私の知る限り、反対から賛成に変えたのは八カ国(P-member)である。賛成から
棄権になったP-memberが一つ。 賛成から反対になったP-memberが一つ。賛成から
反対になったO-memberが二つ。依然として結果は分からない。

その後: OOXMLは承認されたらしい。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.29 | | コメント (0) | トラックバック (0)

日本ソフトウェア科学会 理事

今度、日本ソフトウェア科学会 の理事に選出された。最近は、数式だらけの
論文からは遠ざかっているが、続けるようにという天の声なのかも知れない。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.30 | | コメント (0) | トラックバック (0)

OOXMLの承認と日本投票

OOXMLは、各国が投票内容を変更した結果、ISO/IEC規格として承認された。

もう公開してもよいと思うので、日本投票について述べる。日本は反対から
賛成に変えた。賛成することは技術委員会における投票によって決定された。

私はBRMについて技術委員会で報告し、投票は棄権した。プロフェッショナル
の誇りにかけて言うが、公正かつ的確な報告をしたつもりである。いずれ,情報
処理学会規格調査会のページで、BRM報告書は公開される。

投稿者: 村田 真 日時: 2008.03.31 | | コメント (0) | トラックバック (0)

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